

大切な動物が食べる飼料 だから安心・安全にこだわる

6月上旬の取材当日、面積約30aの播種前の圃場における耕起作業を見せていただいたが、わずか30分ほどで終了してしまった。この圧倒的な作業スピードこそが『ラバータイプディスクハロー』最大のウリである。
体調が優れず食欲がなくなった競走馬や動物園の草食動物が、喜んで食べる牧草がある。その理由を動物達は話してはくれないが、美味しいに違いない。そんな特別な飼料である〝生牧草〟の生産者を訪ねた。
今でこそ一般的になってきた生の牧草〝生牧草〟だが、その元祖は千葉県四街道市に本社をおく中央牧草センターだ。1975年に設立、飼料に関する有機JAS制度ができる前から無農薬・無化学肥料栽培により牧草を生産。JRA中央競馬会などの競馬関係団体のほか、上野動物園などの動物園に向けて牧草を供給してきた、牧草のプロフェッショナルだ。
「もう40年も前の話ですが、もともと私は酪農家を目指していました。当地域を一大酪農産地にしようと大規模酪農を実践していた方の所で修行したのです。酪農の技術を磨いて酪農家として独立して……と考えていたのですが、人生は面白いもので、牧草に進むことになりました。というのも当時、独立した私を含めた数人は良質な牧草を乳牛に与えていました。その牧草の品質が良い、だから牛乳が美味い、と話題になりました。それが競馬関係者の耳に入ったのでしょう、熱心に牧草の取引を依頼されたのです。そこで私のほか数人の酪農家が協力して中山競馬場(JRA)に牧草の供給を始めたのが始まり。1972年のことです」と話してくれたのは創業社長の増田浩二さんだ。現在の圃場面積は延べ20ha。パート、アルバイト社員を含めて21人で管理している。中山競馬場との取引が始まると、後は一直線だった。顧客は関東近郊の競馬場や厩舎へ、また動物園にも広がって行った。中央牧草センターの生牧草は、他所の牧草と何が違うのだろうか? 次男であり経営企画室長を務める増田伸介さんが教えてくれた。
「牧草って一般の方がパッと見ただけではきっと雑草との見分けがつかないですよね?しかし、実際に栽培すれば分かるのですが、事業として無農薬・無化学肥料、そして何より動物にとって安心安全な状態を維持して生産を継続するのは本当に難しい。毎年動物たちのためになる生牧草づくりを目指して改善の繰り返しです。動物たちは正直で本当に良いものは彼らが教えてくれるんです」
栽培技術の一端を説明してくれたのは、栽培管理を担っている、長男であり専務取締役の増田城光さんだ。
「無農薬だからといって、農薬を撒かないだけでは、牧草は雑草に負けてしまいます。また当社は無化学肥料で栽培していますが、有機肥料は使用しています。詳しくは言えませんが、肥料の種類、与えるタイミング、それから牧草を育てる工程に門外不出のノウハウがあるんですよ。牧草は、イネ科・マメ科に大別され、そのなかにも色々な種類があるのですが、これを回しながら栽培するのが大切です。それにより食味・雑草抑制・地力維持を同時に行っているんですよ。雪印種苗さんと協力しながら、より良い品種の開発も行っています」
耕起作業時間を大幅短縮する 作業スピードが自慢
三菱マヒンドラ農機が3月に実施したヒサルラーディスクハロー「最後にもらえる」無料モニターキャンペーンに応募して、見事に当選した中央牧草センターに今春、新しい作業機が導入された。三菱農業機械が2020年に輸入販売を開始した、ヒサルラー社製『ラバータイプディスクハロー』だ。耕起作業をスピーディかつ省燃費で行うことができる。これまでも海外製の高性能なディスクハローは日本市場に入って来てはいたが、それらは大き過ぎたり、日本の圃場にマッチしない作りだったり、また極端に高価だったり、といった製品が多かった。三菱農業機械は、そこに目を付けた。高機能な海外製でありながら適価、そのうえ日本の圃場にマッチしたディスクハローの輸入販売を決めたのだ。
『ラバータイプディスクハロー』はサイズに応じた3タイプをラインナップしており、80馬力以上のトラクターに適合する。機構そのものはシンプルであり、前方に2列の花形の大径ディスク、後方にはトゥースローラーと、3列の回転部品がラバーマウント(高強度ながら振動を吸収するゴムを介して搭載)されている。構造がシンプルだからメンテナンス性が極めて高いのもメリット。洗車後のグリスアップ等の作業が不要なのだ。本製品を実際に日々使用している城光さんが語ってくれた。
「社長が新聞で三菱農業機械の無料モニターキャンペーンを見つけまして、私と室長とで応募しました。1,000件を越える応募のなかから当選したようで、社長は飛び上がって喜んでいましたよ。今日は80aの圃場を『ラバータイプディスクハロー』で耕起します。牧草の場合、収穫時に毎日、軽トラックで圃場に入る必要があります。そのため土壌が固められるので事前にプラウを掛けていますが、水田や一般的な畑作なら、その必要もないでしょう。
感想ですが、とにかく作業速度が桁違いに速い(笑)。これまで行っていたロータリーでの作業は3㎞/h程でしたが、『ラバータイプディスクハロー』は最高15㎞/hで作業できる。作業時間が半分になりました。燃費も良いですね。作業機の駆動にPTOを介さない構造だからでしょう。まだ使い始めて日が浅いので正確な数値は出ていませんが、相当のコストダウンと時短を実現できると期待しています。
最近、『作業を請け負ってほしい』・『農地を手放したいけど作業が辛くて……』という方から、連絡をいただくことが増えています。当社では『これ以上、耕作放棄地を増やしたくない』という想いから、可能な限り引き受けているのですが、当然のことながら面積が増えれば作業量も増える。それに対応する手段の一つが、優れた機械の導入です。作業を効率化して経費を削減できれば、持続可能な生産が可能になります。そして少しでも、当地に動物と地球に優しい農業を残して行きたいのです」
文・川島礼二郎
マイクロプラスチックを出さない技術。それがペースト施肥
(図上)ペースト肥料を上・下層の二段に分けて施肥することで肥効持続期間を延長させる技術が『ペースト二段施肥』だ。通常の施肥では上根だけだった肥料供給を下根へも直接施肥できるから、下層の根を有効に生育させ、収量にプラスの影響を与えることが期待されている。(写真右)片倉コープアグリと協力してペースト肥料に対応した施肥機を開発したのは三菱農業機械である。
疎植+ペースト2段施肥を組み合わせる

「普通は5~6本植えますが、この疎植では2本。だから苗箱を大幅に減らすことができ、省力化が可能です。ペースト施肥は初期成育が良く、苗の活着が良い。ですから、疎植が気になるかも知れませんが、昔の手植えと同じように元気な苗ですからシッカリ分けて、安定した収量が得られるのです」
“有機”JASペースト肥料を2段施肥する

「健康な苗を植える疎植は、雑草や病気との過酷な戦いを強いられる有機栽培との相性が良い。そこに注目して、疎植と長崎油飼工業の有機JASペースト肥料「シィープロテイン」の2段施肥を組み合わせた栽培方法を検証しています。三菱農業機械の施肥機は上下の吐出量をそれぞれに細かく調節できるので、この検証でも大いに役立っています」
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中央牧草センターが使用するヒサルラー社製『ラバータイプディスクハロー』。耕起作業を圧倒的な速度で、かつPTOを使用しないので燃料費を抑え低コストで行うことができる。
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中央牧草センターが使用するヒサルラー社製『ラバータイプディスクハロー』。耕起作業を圧倒的な速度で、かつPTOを使用しないので燃料費を抑え低コストで行うことができる。
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中央牧草センターが使用するヒサルラー社製『ラバータイプディスクハロー』。耕起作業を圧倒的な速度で、かつPTOを使用しないので燃料費を抑え低コストで行うことができる。

ラバータイプディスクハロー 高速で大地を駆ける
畑だけではなく、水田の耕起作業にも使えるディスクハローが上陸。
浅耕、播種床の準備、除草、肥料・堆肥の混和、表層の固い土を破砕、作物残渣・緑肥のすき込みを一度に高速で行え、作業効率の向上に大きく貢献します。従来に比べ、短時間で広い面積を耕起できるので、規模拡大のサポートや人手不足の問題解決にも一役買います。また、PTOを使用しないので、大幅に燃料を節約でき、コスト低減につながります。